空港で見かけた素敵な親子

つい最近のことです。アリゾナの飛行場でフライトを待っている間に子ども2人連れの母親を見かけました。上の子は3歳ぐらいの女の子で、下の子どもは1歳半ぐらいの男の子で、よちよち歩きをしていました。

何気なく見ていると、母親が愛情のこもった目で二人の子どものしていることに関心を持って見ている様子が目に入ってきました。母親が、ぬいぐるみのおもちゃをバッグからとり出している女の子のしぐさに目をとめて、それに助けの手をさしのべたかと思うと、物を食べながら、がさがさ動きまわっている男の子の様子にも注目していました。
 
この親子たちのやりとりで特に私の関心を引いたのは、男の子が食べ物を食べ終わったときでした。母親が男の子に、大人の足ならば数歩でゆけるところにあったゴミ箱を指差して、「あそこに食べ終わった物の殻をすてるのよ」と説明しました。そして、その子をゴミ箱のところまで連れてゆこうとした時に、そばにいた女の子にもきちんと声をかけて、「これからこの子をゴミ箱のところまでつれてゆくから、ここで遊んで待っていてね」と話して、女の子がそのことを理解するのを確認してから男の子の手を引いてゴミ箱のところまで歩いて行ったのです。

ゴミ箱のところで男の子に「ポイと捨てるのだよ」と捨て方を教えて、子どもがきちんとゴミをゴミ箱に投げ入れることができたときに「Good Job!(よくやったね!)」と言って誉めたのです。

女の子は遠目にその光景を見ていました。男の子は誇らしげに、母親と席にもどってきました。彼はもっと誉められたかったのか、さっそく捨てにゆけるものを探しにかかりました。そこにはちょうど、お姉ちゃんが食べかけにしていたチーズの小さな箱が置いてあったのです。男の子はそれを手にとり、すぐさま捨てにゆこうとしました。お姉ちゃんはあわててそれを取り返しにゆこうとしました。瞬間、きょうだい喧嘩がはじまるかなと思ったほどの状況でした。

母親はきょうだいのやり取りを目ざとくみつけると、「これはお姉ちゃんのものだから、あなたは捨てにゆきたいけれど、お姉ちゃんがいやと言っているから捨ててはいけないの」と弟の目をみつめながら説明をしました。そして、自分の言い分が通らずにぐずっている男の子を膝にダッコして静かに話しながら彼の気持ちを落ち着かせたのです。
たとえお姉ちゃんの食べ物と言っても、もう食べ残しのものなのに、お姉ちゃんの気持ちを尊重してまた弟にそれをわからせようとするこの母親の姿に私は感動しました。

女の子は母親の対応に満足をしたのか、チーズの箱をそこに置いたまま自分の遊びに戻ってゆきました。数分遊んだ後でお姉ちゃんはチーズの箱を捨てにゆくからと母親に言いにきました。母親は即座に、「今あなたの弟がゴミをゴミ箱に捨てることを学びはじめたばかりだから練習させてあげてくれないかしら」と頼みました。お姉ちゃんは弟にチーズの箱をわたして、お母さんに手をつないでもらって、満足げによちよち歩きをしてゴミ箱に近づいてゆく弟を見届けました。母親とお姉ちゃんが一緒になって「Good Job !(よくやったね!)」と言っているその光景は微笑ましいものでした。
 
2人の子どもを抱えた母親にとって、子ども一人一人の気持ちや欲求に目をむけることは容易なことではありません。それだけでなくこの母親は時を見計らって、落ち着いて2人の子どもにそれぞれの年齢に適した学びを提供したのです。

ごみを捨てて、“Good Job(よくやったね)”と言われて達成感に満ちて満足げな男の子と、母親と一緒に弟に大切なことを教えているというプライドに満ちた女の子の姿を見て、私は心の中で“Good Job(よくやったね)とそのお母さんにむかってエールを送っていました。子どもはこのように尊重されると他の人のことを尊重できる、共感的な社会性のある子に育つのです。