「赤ちゃん捨てて来て!」と子どもが言い出すとき
「ママ、いつ妹を病院へ返すの?」
「ねぇ、パパ、赤ちゃんをお花畑へ捨てに行こうよ」
お姉ちゃんやお兄ちゃんになったばかりの子どもの口からそんなことばが出てくる。
親にとっては衝撃的ですが、これは新しくお姉ちゃんやお兄ちゃんになった子の思いを表現しているのです。
お母さんやお父さんの関心を赤ちゃんに取られたり、何もかも分け合わなければならなくなって、自分は我慢をさせられるばかり。この赤ちゃんさえいなくなれば前のように自分が愛情や関心を独占できるんだ…そんな発想から、子どもたちは‟妹や弟はもういらない、もうたくさん!”と訴えているのです。
突拍子もないことを言われびっくりした親はこんなときどうするでしょう。
「そんなバカなことを言うんじゃないの、そんなことできないでしょう。赤ちゃんはお家の大事な子でしょう」と叱ったり、いかに赤ちゃんが大事かをさとしたりしがちです。
しかし、親から一方的にとがめられると、自分の気持ちをわかってもらえない上の子と親の間に心の溝ができてしまい本音を隠す子どもになってしまいます。
親御さんに理解していただきたいのは、子どもの目的は赤ちゃんがいらないということではなく、 “わたしのことはもういらないの?”‟前のように僕の方にも関心を向けて”という自分の心情を、自分が知っている唯一の表現法で必死に伝えているということです。
このような子どもの心をわかって、上の子どもにも特別の配慮をしてあげてください。
例えば「ごめんね、赤ちゃんに時間がかかって、あなたとの時間がとれなかったね、赤ちゃんに昼寝をさせるから、そうしたらあなたとママの時間よ」とか「パパに赤ちゃんを見てもらって、ママと二人でお出かけしようね」というように。
「赤ちゃんの世話で手いっぱい。忙しくてとてもそんな時間はない」と思う人も多いでしょうが、上の子どものために特別に割く時間は5~10分でもよいのです。
とにかく上の子が100%ママの愛情に浸れる時間を作ってあげることが大事です。この時間が愛情補給の時間となって、上の子は次第に自分自身で活動をしていけるようになります。
また、子育てにはパパの存在や関心も重要です。「今日、あなたはパパと特別のおでかけ、赤ちゃんはママとお家でお留守番よ」とか「ママが赤ちゃんのお世話をしている間はパパに絵本を読んでもらおうね」というようにパパとの特別の時間をつくることも大切です。
でも、決してパパは上の子担当で赤ちゃんはママ担当、というように役割を固定しないように気をつけてください。上の子どもにとって、ママと過ごす時間もパパとの時間とは別のかけがえのないもの。バランスが大切です。
こうして、親からの以前と変わりない関心や愛情を感じるようになると次第にお姉ちゃんやお兄ちゃんになった自分に慣れてきて、妹や弟の存在を受け入れられるようになります。