感情が暴走し、キレやすい大人への対応 その1 ~キレやすいひとの中では、何が起こっているのか~

前回のコラムで、感情が暴走する人についてとりあげたところ
たいへん多くの方にお読みいただきました。
感情が暴走しがちな人は世の中にはたくさんいて、
多くの人が傷つき、その対応に困っているのだと痛感しました。

感情が暴走する人に繰り返し攻撃されたり、
理不尽な扱いを受けて悩み、行き場のない恐怖や怒りを抱えている方、
相手の顔を見るのも嫌だ、萎縮して何もできなくなる、という方は
どうか心理の専門家の力を借りて自分を癒してあげてください。
傷が癒えると相手のことを客観的に見ることができ、
身近に自分を助けてくれる人がいることに気づいたり、
この状況をどうしたらよいかを
落ち着いて考えられるようになります。

そこまでは苦しんではいないけれど、
感情が暴走する大人の対応に困っているという方のために
続編を書くことにしました。
※発達途上の子どもの場合は違う対応も必要ですが、
参考になるところもあるかもしれません。

感情が暴走し、いわゆる“キレて”しまう人が
キレやすい人になった原因も、対応の仕方もひとりひとりの状況で違いますが、
キレる人の中でいったい何が起こっているのかを
少しでも理解できれば、解決の糸口が見えるのではないかと思います。

しょっちゅう感情が暴走して止まらない人は、
親などの養育者との愛着関係により作られるはずの
外からの刺激に対する興奮や情動をしずめる脳の回路
「情緒安定のシステム」が育っていないことが多いのです。

人間の赤ちゃんは誰かに助けてもらわないと
自分の生命を維持できない状態で生まれてくるので、
外からの刺激による危険を感じたり、
不快になると興奮して泣いて周囲の人に注意をひきつけ、
不快が解消されるまで泣いたりぐずったりします。

そのときに親がそこに行き、
その興奮に波長を合わせて適切に受け止めたり、
赤ちゃんのニーズにこたえてあげることで
徐々に内的安定を取り戻して興奮がしずまっていきます。
それを繰り返すことで興奮をしずめる脳の回路
「情緒安定のシステム」が育っていくのです。

脳が育つこの時期に適切な応答をしてもらい、
興奮をしずめる脳の回路が育っていないと
身体や知能が育った後でも、
自分の安全が脅かされたと感じたときに
反射的に興奮スイッチが入り止まらなくなり、
相手を罵倒する、暴力をふるうということが起こります。

情緒安定のシステムがないのなら、
どうしてよその人には優しいし、外ではていねいに対応できるの?
と思うかもしれません。
それは、攻撃をしかけたらもっと自分が危険になると
潜在的にわかっている相手に対しては
たとえ不快感情が起こっても抑えて出さないようにしているからです。
そして、おさえてため込んだ感情は出口を求めて
気を許している相手に対して爆発し、
“八つ当たり”、“なんくせをつける”、といったことがしばしば起こります。
この使い分けにより “二重人格”とか“弱い者いじめ”と言われるのです。
いずれにしろ、その人にとって潜在的に“危険”と感じていることから
自らの身を守るために反射的にしていることなのです。

感情が暴走し、いわゆる“キレている”ときの様子を客観的に見ていると、
しぐさ、表情、声の調子や言っている内容が、
まるで、機嫌を損ねて収拾がつかなくなったダダっ子みたいになっていることに
気付かれると思います。
たとえば、
・何もかも人のせいにする
・イチかゼロの極端なことを言う
・その場しのぎのうそをつく
・支離滅裂なことを言う
・長期的に見て自分が不利になる(合理的でない)ことを言う
など

何が起こっているかというと、
パニックになり、心の安全感を失って、
理性が適切に機能しなくなっているのです。
このような状態のときに「話せばわかってもらえる」と
必死に説明や説得をしても、本人には全く通じません。

子どもならまだしも、大人にキレられると、
手が付けられずやっかいですが、
キレている本人が安全感を失い、
恐怖と混乱の中にいて、
一時的に子どものようになっているのだとわかると、
周りの人は少し心に余裕が持てるかもしれません。

感情が暴走してしまって困っている人たち、
また感情をぶつけられて困っている人たちの話を聴くにつけ、
人格、人生の基盤となる“心を育てる”ことがどれだけ大切か、
また、感情を抑え込むのではなく、
適切に扱うことを学ぶことでいかに多くの人が救われるかと思い、
ますます、感情力、共感力の学びをひろげていきたいと強く思う今日この頃です。

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