接し方で子どもは変わる

前回まで、近接分離とは何かについてお話ししました。ここでは、そのまとめとして、どのように子どもに接したら、近接分離を防ぐことができるのか、考えてみましょう。

親の側には、子どもに関心を向けたり、情緒的な要求に応答に情緒的な同調ができない、さまざまな個別の事情もあるでしょうけれど、短時間でも、今この瞬間に目の前にいる子どもに(妊婦の場合はお腹の子どもに)意識を向けてみてください。子どもに対する先入観やこうしてほしい、ああなってほしいといった考えも横において、子どもがどんな様子でいるのか、どんなことを感じているのか、をただ受け止めてみてください。そして受け止めているよ、わかっているよということを非言語、または言語で伝えてみてください。子どもに意識を向ける、子どもの状態に波長を合わせる、目線を合わせる、体を向ける、言葉をかける、といった行為をされることで子どもは自分という存在が認められ、自分のことをわかろうとしてもらっていると感じることができます。それをするだけで、子どもに変化が見られるのに気づかれることでしょう。

「うちの子はまだ言葉がわからないから話しても無駄だ」と言う人もいますが、あなたがしていること、または言っていることや感じていることは伝わっているのです。胎児でも母親の感じていることがわかり、その影響を受けるという研究があります。幼い子どもたちは言葉の内容は理解できませんが、特に話し手の雰囲気、姿勢、表情、声の高低、強弱、語調などの非言語メッセージに頼って敏感に状況を感じ取っています。私たち大人でも9割は非言語でコミュニケーションをしていると言われています。幼い子ども達が非言語メッセージに反応しているのは当然のことだといえましょう。

こんなことを言うと「ずっと子どもに意識を向けていないといけないの?」と不安になる人がいるかもしれません。いいえ、子どもが起きている間、ずっと100%子どもに関心を向けることは不可能なことです。大事なのは、子どもに意識を向ける時間の長さではなく、子どもと接するときのあり方。つまり、どのように接するかなのです。

親には、子どもと一緒にいる間にも、しなければならない家事や仕事がたくさんあります。とても子どもにかまっている余裕がない時もあるでしょう。そういうときは、例えば子どもに「ママは今、お掃除をしたいから30分間一人で遊んでいてくれる。終ったら一緒に〇〇をして遊ぼうね」というように説明をして、子どもにもわかるタイマーをかけて、自分の目の届く範囲に子どもを遊ばせながら、家事をすませます。終わったら、約束どおり子どもに100%関心を向ける時間をつくればよいのです。もし自分が疲れてしまっているときは、「ママは疲れたから10分間休ませてね」というように自分の休養をとることもできます。このようにメリハリをつけて子どもとの時間を持つようにすれば、子どもは自分が欲しいときに親の関心をもらえるということがわかってきますので、常に親の関心を要求することがなくなり、自分が何かに夢中になっているときは親の関心がなくても安心して遊ぶことができるようになります。もちろん、子どもが孤独を感じたり、誰かに見守ってほしかったり、不安になったりしてあなたの関心を求めているときには作業の手を休めて注意して意識を向けてあげてください。

自分が必要とするときに親から関心を向けられ、気持ちを理解されて育った子どもは情緒的に安定し、人の気持ちを大事にできる感受性ゆたかな子どもに成長してゆくのです。