「知性」と「情緒」のバランス

今日は、なぜ私たちが「子どもの心育て」というワークショップをすることになったか、お話ししましょう。
親御さんたちは、子どもに対して
「よく勉強ができるように育てて、いい学校、いい会社に入って将来困らないようにしてあげたい」
という願望が強いので、教育に重点を置いています。
親の関心はその子どもがどんな人間に育って欲しいのかよりも、
成績とか学歴のような評価に焦点が当たっています。

子どもは親を喜ばせるため、または親に叱られることを恐れて一生懸命に勉強をします。
その結果、子どもは優秀な大学に入り、一流の会社に入っても、
子どもの中にある「心」が育っていないために外からの評価を常に気にして挫折してしまう、ということがしばしば起こります。

私たちのところには、優秀な一流高校や一流大学に入っても不登校になったり、
一流の会社に入社しても、うつ症状で会社に行けなくなっている人がしばしば相談にこられます。
何が起こっているかを探っているうちに、これらの人たちの問題は心が育っていないからだと気づかされました。
成長が学業や知性に偏っていて、「心」が育っていないために情緒が不安定になっているのです。
それ故、自分が持っている力を発揮できないのです。

情緒を育てることは、子どもの人生の基盤をつくることです。
この基盤がなければ、土台のないところに家を建てたも同じです。
何かが起こるたびにぐらぐらと揺れてしまいます。

いま、世間では殺人事件やテロなど恐ろしい事件がたくさん起こっています。
事件の動機が単に「誰でもいいから殺してみたかった」なんて、
信じられないようなことが現実に起こっています。
こうしたこともすべて情緒が影響するのです。

これまでは、誰もが知性のトレーニングに一生懸命でした。
でも、もともと日本には「臓の上に知がある」、つまり、「腹がすわっていないとろくなことができない」と教えられてきた文化があります。
私たちはそれを忘れてしまって、「知」に偏り、ともすれば「頭でっかち」な人間を育てることに躍起になってきました。

だからバランスがくずれてしまったのです。
情緒と知性、両方なければ人間はうまく行かないということなのです。

心をどうやって育てるかを学んで、自分なりに親としてどうすればいいかを考える時がきています。
私たちのこれまでのカウンセリング経験からいえば、知性と情緒のバランスがゆがんでいて問題が起こっていても、少しずつかかわり方を変えていけば取り返しがついて、より幸せな人生を送れるのですから。

(田中万里子「子どもの心育てワークショップ」より)