IT機器では子どもの脳は育たない
最近、レストランで小さな子どもを静かにさせようと、スマートフォンやタブレットで動画を見せている親御さんをよく見かけます。子どもがだまらないと叱っては次の動画へ。次から次へと変えて見せたりします。それでも子どもの気持ちはおさまりません。「高いデバイスを買って、楽しい動画を選んで見せてあげているのに、どうして?」と思われるかもしれません。
でも、この子どもの反応は当たり前なのです。
子どもが望んでいるものは親との遊びや親からの関心であって、機械に相手をしてもらうことではないのです。 人の気持ちは、人と人とのかかわりでおさまるのですから。
いくら大人にとって便利なツールでも、そればかりは、「機器」にはできないことなのです。
子どもの脳の成長にとっても人間的なかかわり合いが必要不可欠です。
人間は社会的な生き物ですから、人と人とのかかわりによって脳の神経回路が作られ、物事を習い、覚え、それによって脳もまた育っていきます。
人と人とのかかわりがなければ、あなたが親として育てている、あるいは専門職としてかかわっている子どもの可能性を最大限に伸ばすことはできません。
子どもはお母さんとの温かいかかわりがあるからこそ、お母さんが使っている言葉を覚えます。お母さんのぬくもりを感じながら言葉を脳に刻み込んでいくのです。
学校や保育園などでも同じことが起こります。子どもが尊敬や親しみを感じている先生が取り組んでいることに自ら関心をもち、「楽しい」と感じながら教室でやっていると、子どもの興味もそちらに向きます。親や先生から最初に受けたよい経験から、数学や理が好きになったり、スポーツに興味を持ったり、絵や音楽や本が好きになる、という体験を子どもはするのです。子どもの脳を育てるのは人とのかかわりで与えられる「心地よい経験」なのです。
いまの子どもたちは生まれながらにインターネット環境がある時代に育っています。 大人たちは、なるべく早くIT機器を子どもの世界に導入すれば子どもが賢くなる、と思いがちです。 しかし、研究はその逆を示しています。IT機器では子どもの社会的な脳は育たないのです。