下の子が生まれるときにしておきたい5つのこと(その2・3)

前回に続き、きょうだいの出産にあたって、親は上の子に対してどのように気を配ればよいのか、考えてみましょう。

2.母親の入院中も、母親との絆を確かめられるようにする

幼いこどもは時間の感覚が大人とは違います。「赤ちゃんを産むために一週間留守にするよ」といわれてもピンときません。カレンダーなどを使って視覚的、感覚的に日にちや時間の感覚を教えてあげましょう。
たとえば、カレンダーにお母さんが帰ってくる予定の日に◎をつけて、「この日にママは赤ちゃんと病院から帰ってくるよ。」と教えます。そして、一日が終わるたびにカレンダーの日付に×をつけて、「あと〇つ寝るとママと赤ちゃんが帰ってくるからね」と毎日いっしょに指折り数えてあげる。そんなことを繰り返すと時間の感覚が少しずつわかってきます。

 また、ただでさえ幼い子どもは母親がそばにいないと不安定になりますから、できるだけ母親がいたときと同じように生活ができるよう配慮をして、不安や混乱を減らしてあげることも大切です。

特に夕方から夜にかけての時間帯は、子どもは母親がいないことで特に不安定になりがちです。この時間帯に、母親が電話などで声をきかせたり、顔を見せたりして(いまはスマホでビデオ通話も簡単にできますね)、子どもが母親との絆を確認できるようにしてあげるとさらに安心です。もし、ママ恋しさに泣いたりしたら、それをはぐらかすのでなく、「ママが病院に入っているので寂しいね」と気持ちをわかってあげて、留守番の大人がしっかりその寂しさに共感してあげることも大切です。気持ちをはぐらかされると、寂しい気持ちを持ってはいけないというメッセージになり、それを我慢するようになります。そうすることは子どもにとっては相当のストレスになり、のちのちのトラウマにつながるので、沸き起こってきた感情を周囲にいる大人が受け止める配慮が大切です。

3.「赤ちゃん」がどういうものかを事前に子どもに教えておこう

子どもにとって、初めてのきょうだいとはまさに未知の存在です。
初めて見る「赤ちゃん」がどういうもので、赤ちゃんと一緒に過ごすことがどういうことなのか、よくわかっていません。

私のクライエントのAさんが話してくださった、ご自身の子どものときのエピソードは、子どもの物の考え方、捉え方がよくわかるのでご紹介しましょう。
Aさんが3歳のとき、お母さんが出産のため病院に行く前に
「ママは赤ちゃんを産みに病院に行ってくるからね。赤ちゃんを連れて帰ってくるから、いい子にしておばちゃんと待っていてね。」と彼女に言いました。
彼女は「いい子にしていてね」と言われたので赤ちゃんのためにベッドを用意しようと考えたのです。3歳の彼女が唯一知っている“赤ちゃん”は小さなお人形の赤ちゃんだったので、5cm幅の小さな箱を探してきて、布の切れ端を切って底に敷き大満足で、毎日「赤ちゃんはいつ来るの?」と心待ちにしていたそうです。そしてとうとうお母さんが帰ってきたとき、Aちゃんは自分の想像とはかけはなれた赤ちゃんの大きさにびっくりして大泣きをして
「ママが長く帰ってこないから、赤ちゃんが大きくなりすぎて、私の用意したベッドに入らなくなっちゃったじゃないの!!」と怒ったそうです。

この例からわかるように、子どもは自分の体験や知っていることをベースに赤ちゃんを空想するものです。また、子どもにとって一週間という時間はとてつもなく長く、赤ちゃんが大きく育ってしまうような感じのするものなのです。

このような問題を作ることを避けるためにも、上の子どもには事前に「赤ちゃんとはどういうものか」をわかるように教えてあげることが大切です。
たとえば、上の子自身の産まれたときの写真などをみながら、
「あなたもこうやって病院でうまれたのよ」とか、
「これはあなたが生まれて一週間たったときにパパがお迎えにきて、ママは病院からあなたを連れてお家にもどってきたときのお写真よ」
と子どもが理解できるよう、具体的なものや映像や写真などを使って説明をするといいでしょう。

次回は、その4・その5をお話しします。