下の子が生まれるときにしておきたい5つのこと(その4・5)

きょうだいの出産にあたって、親は上の子に対してどのように気を配ればよいのか。その最終回です。

4.退院したら、最初に上の子への「ねぎらい」の一言を

母親が赤ちゃんをつれて病院からもどってくるときの上の子の心情を想像してみてください。大切なお母さんと一週間も一緒にいられなくて、とても不安で、不自由でさみしい思いをしているのに、ようやく待ちに待ったお母さんは、いかにも大事そうに赤ちゃんを抱きかかえている。上の子は、まるで自分は用なしになったかのように感じてしまいます。

そんなときにお母さんから
「ただいま、寂しかったでしょう。」
「お母さんがお留守の間、よく頑張って待っててくれたね」
の一言があると子どもは救われた、わかってもらえたとほっとし、留守の間、子どもなりにがんばってきたことが報われた思いになります。

でも、ただ「あなたの弟(妹)よ、可愛がってあげてね」と言われたら、どうでしょう。
上の子はさみしさやおもしろくない気持ちを押し殺して、親の期待通りに「よい子」をしなければならなくなるのです。

この状況に拍車をかけるのがお祝いに集まってくる親族、親戚、友人といった大人たちです。
みんなは赤ちゃんの誕生で有頂天になって「可愛い、可愛い」を連発し、それまで関心の中心にいた上の子は関心が向けられません。上の子はますます居場所がない感じがしたり、自分が透明人間になったように感じたりするのです。これほどショックで自尊心が傷つけられる体験はありません。

さらに、その大人たちから、
「お兄ちゃん(お姉ちゃん)になったんだから、いい子にしてね、赤ちゃんのお世話をしてあげてね、仲良くしてね。」
と言われると、上の子は、自分の居場所や存在価値を確保するために期待に応えざるを得ません。

しかし、初めてきょうだいが生まれる場合は、お兄ちゃん(お姉ちゃん)も初心者なのです。それなのに、何が起こったかもよくわからないまま、「お兄ちゃん(お姉ちゃん)なんだから・・・」という漠然とした期待や、過剰な期待を背負って生きていかなければなりません。

このような無理を強いられ、うまく消化できないストレスを抱えるとき、上の子は下のきょうだいに対して意地悪になるのです。良い子でいなければいけないので親の前ではしませんが、人の見ていないところでするのです。つまり、大人の配慮のなさ、共感のなさが後々、きょうだいの仲の悪さを作るのです。

きょうだいができるこの時期はとても大切なときです。子どもが体験していることを子どもの立場に身をおいてどんな気持ちになっているのかを理解してあげて、共感的になってあげてください。

5.上の子にもプレゼントを

ところで、「周囲の大人」のひとりとして、私がいつも心がけていることがあります。
それは上の子に「お兄ちゃん(お姉ちゃん)になったプレゼントをすることです。

みんなの自分への関心や愛情が一気に、新しい赤ちゃんに向いてしまったショックで動揺しているときに、赤ちゃんだけが誕生プレゼントをもらい自分には何もないと、もっとつらい気持ちになります。それをうらやましがれば「あなたも、生まれた時にもらったのよ、我慢しなさい」と言われてしまいます。でもそんなことは思い出せません。

そんなときに〝お兄ちゃん(お姉ちゃん)になったプレゼント“は「あなたのことも思っているよ、これまで通り大切な子どもなんだよ」という気持ちを伝えることになり、子どもの心を和ませ、心の支えになります。
子どもは自分が公平に扱われているかにとても敏感ですから、こうした配慮がとても大切なのです。