性教育に「たとえば」は通用しない

私の友人がティーンエイジャーの子どもたちに性教育の授業をおこなっていました。
性教育に欠かせないのが避妊の知識です。
10年ぐらい前のアメリカはリベラルなようで、
ピューリタン精神が社会に蔓延しており、性やからだに関するタブー意識が強く、
性教育の現場でも性器の模型を使うには許可が必要でした。

そこで彼女は、高校生にコンドームの使い方を教えるために、
ペニスの模型の代わりにバナナを使って説明することを思いつきました。
生徒たちの前で、バナナを手に持ち
「これがペニスだとしたら、このようにコンドームを使うと避妊ができるのよ」
と言ってバナナにコンドームをかぶせて見せて説明しました。
高校生たちは神妙な顔をして話を聴いていたので、
わかってくれたと思い授業を終えたそうです。

それから数カ月たったある日のこと。
一人の男子生徒が困った顔をして彼女のところにやってきました。

「先生に言われた通りにしたけれど、ガールフレンドに赤ちゃんができてしまった」。

彼女は「もしかしたら、コンドームがきちんとつけられていなくて精子が
漏れたのかもしれない」と思い、その男子生徒に「どのようにコンドームを
つけたの?」と尋ねました。
すると男子生徒はまじめな顔で言いました。

「先生が見せてくれたように、バナナを買って、ベッドのそばにおいて、
ちゃんとコンドームをかぶせておいたよ」。

彼女は自分の説明の仕方がまずかったことに気づきました。
人前では性のことを恥ずかしくてきちんと話せない高校生が
先生の話をボーッと聞いて、早飲み込みをしてしまったらしいのです。

高校生ともなれば、抽象思考ができるようになり、
「例えばバナナをペニスとして考えたら」と言われてもわかりそうなものですが、

自分の未知の世界に関すること、特に自分がとても不安なときは
まだまだ具体性思考に戻りがちなのです。
それゆえ、見た通りにすればいいと思い込みやってしまったのです。

この話は一見、滑稽にみえますが、
高校生が同級生を妊娠させるという大きな問題を作ってしまいました。
ひとたび妊娠してしまえば中絶するにしろ、子どもを産むにしろ、
別の新たな問題を作ります。

このような問題を防ぐためにも、相手が自分の子どもであれ、生徒であれ、
どのように性について教えていくかを考えておく必要があります。



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