「ソーシャル・ディスタンシング」を誤解しないで
Social distancing ≠ Social isolation
人と人が身体的距離をとるということは社会的孤立ではありません。
しかし、人と身体的距離を持たなければいけないから、
人を拒絶して、引きこもるよりほかないと誤解している人も多いようです。
今年、コロナウイルス騒動で初めて
「Social distancing(社会的距離)」という言葉を聞くようになりました。
コロナウイルスに感染している人からウイルスをもらわないように
自分が気付かずに感染していたとしても人にうつさないように
身体的に安全な距離を保ちましょう、
つまりお互いのために、お互いを大切にするためという意図で導入された言葉です。
人と距離をとらなければならなくなり、
心も離れていくようで孤独や寂しさを感じるかもしれません。
しかし、身体的な距離をとるということは
孤立することではなく、
相手と自分を大切にし、守るための“思いやり”です。
Social Distancingの意味を誤解して、
引きこもったり、人との対話を避けたりすると
孤独感や、疎外感を感じてしまうことにもなりかねません。
人間という言葉が示すとおり、私たちは人と人の間で生きていく存在です。
人が危機を体験したときに人が本当に求めているのは
何かをしてもらうことではなく、
自分のためにそこにいてもらうことです。
2016年に宮城県石巻市で
県内各地で被災者支援にかかわる方たちにお話をする機会を
いただいたことがありました。
講演の最後に、
お越しになった方へ感謝の気持ちとして講師の田中万里子が、
会釈か、握手か、ハグか、あなたのお好みのふれあいで
ご挨拶をします、と言い、出口に立ちました。
遠慮してか、突然でびっくりしてか、
初めの数人は会釈だけでしたが、
誰かがハグを求めたら、
そのあとはほぼ全員にハグを求められました。
会釈だけで出られたのにその光景をみて並び直された人や
「ずっとこんな風にしてほしかった」と
涙を流された方もいらっしゃいました。
ずっと長い間、自分の気持ちを押し殺し、必死に
“がまん”を続けて耐えてきた人たちの緊張が解けたように感じました。
文化的にハグの習慣がない地域だからびっくりしましたが、
人が癒されるためには直接的な人とのふれあいを必要としているのです。
不安の大きいときだからこそ、人とのふれあいが大事です。
とは言っても、今は人と接触することは現実的にはできないので、
知恵をしぼり、工夫をして“安全な心と心のふれあい”を維持しましょう。
電話、Skype、ZOOM、電子メール、LINEなどの
テクノロジーを使ってみんなと連絡をとったり、
お話をしたりして関係を深めることもできます。
エアーハグ、エアーハイタッチもいいかもしれません。
そして、近い将来、人類がこのウイルスとうまく共存できるときがきたら
思いっきりリアル・ハグをしましょう。
そのときが来るまでしばらくは、
ひとりひとりができる安全対策をとって
感染拡大を防いで多くの人の命を守りましょう。
